柴田友秋著作集

教育基本法を守れ!

 社会教育が行政サイドでおこなわれる機関として全国の市町村に社会教育委員会、公民館運営審議会、図書館が設立されている市町村では図書館協議会がある。これらの諸機関は社会教育法にもとついて運営されている。その社会教育法は教育基本法の精神にのっとり、社会教育に関する国および地方公共団体の任務を明らかにすることを目的とし、学校教育過程として行われる教育を除き、主として青少年および成人にたいして行われる組織的教育活動である。教育基本法は民主的で平和で人類の福祉に貢献し、真理と平和を希求する人間の育成、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじる自主的精神にみちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならないとある。

 茨城県教育庁で作成した生涯学習をすすめるための指導書のはじめに「社会経済情勢など激しく変動する時代に県民は真の豊かさを求めて多様な学習活動への参加を希求しております。これらにこたえるため生涯教育の体制を整備し、その推進を図ることが地方公共団体の大きな課題となっております」と述べられている。

 鉾田町の社会教育施設には、公民館、図書館があり、現在町営運動公園が建設中で、野球場とテニスコート六面は完成され、四〇〇層の三種公認の陸上競技場と面積四〇〇〇平方層の体育館が建設費八億一〇〇〇万円で昭和五九、六〇年の二ヵ年計画で五事がすすめられている。

 現在教育改革について審議がすすめられている。委員のなかから教育基本法の改正論がとびだしている。

 鉾田町の世帯数七〇〇〇、人口二万八○○○人余で社会教育行事に参加しているものは、スポーツ協会に一四五一、公民館事業の青年・婦人学級、各種講座、郷土史研究など八○○、図書館は一九八二年ヒ月に開設され、八四年一〇月現在で読者登録数四二八五となっている。

 社会教育役員の研修が例年行われるが、そこでの発言は、社会の多様化にたいし、どうあるべきか、親子、近所のふれ合い、青少年の非行化の話が中心となっている。社会の現象の諸問題の背景については論ぜられない。

 正義を愛し真理を希求する姿勢は希薄であるが、教育基本法の理念は最低限は守られていると思う。教育基本法が改正され反動的な道徳論が指導の面に入ってくると、全国的に社会教育機構を通じ、社会教育活動に参加している人たちにストレートに浸透されることは必至である。

 中曽根首相は教育基本法は改正しないと言明しているが、しかし自民党政調会長の藤尾氏は、あらゆる会合で道徳論を主張し、基本法の改正論を打ち出し、基本法改正の空気を助長させ、市民権を得る工作をすすめている。また、一方、行政改革の名のもとに社会教育費は削減さ

れ、社会教育施設の民営論が資本家側より主張されている。資本の論理で社会教育が考えられることは、すべての国民を資本家のための忠実なる人間に教育しようとすることにほかならない。

 民主的で真理と平和を希求し、正義を愛することは資本家とその政治家にとっては、めざわりでたまらないであろう。われわれはあらゆる立場で、あらゆる場所で、日本の将来のためと日本のこれからの子弟のために、教育基本法の改正に反対し、基本法を守ることに全力をそそがねばならない。

   (『労働者』昭和六〇<一九八五〉年一月五日付)